JA木曽長期ビジョン 2022-2024 3ヵ年計画
JA木曽の10年後めざす姿
JA木曽長期ビジョンは、2019-2021 3ヵ年計画において実施した事業拠点再構築計画というハード面改革の基、“その効果を最大限発揮するための経営管理、事業運営を改革することにより事業発展のための投資と組合員還元が行えるJAとなり負託に応えていく”というメッセージへステップアップさせてまいります。
更にその先の10年後のJA木曽のめざす姿を、互いに助け合い協力し合う“協同の力”を発揮した事業・活動によって、木曽地域や農業が活性化している姿を描いていきます。
その達成に向けて3ヵ年計画における経営戦略・戦術を策定し遂行してまいります。
JA木曽長期ビジョン 2030めざす姿
「農業と協同の力で木曽の未来をささえます」
次期3ヵ年で重点的に取り組むテーマ
JA木曽にとっての次期3ヵ年計画は「10年後のめざす姿」実現に向けて足元をしっかりと固め、成長するための基盤を盤石にする必要があります。
そこで、現状の組合員のニーズや事業・活動の課題に対応することにより農業生産基盤の維持強化、農業収入の増大、組合員との対話による事業活動を展開し経営基盤強化に取り組んでまいります。
2022年度~2024年度の基本目標を以下の通りに掲げテーマ別に施策を講じてまいります。
▼農業の分野 持続可能な木曽農業の実現
大規模から小規模のあらゆる農家層へそれぞれのニーズに合った支援を実施し経営向上や生きがいづくりで持続可能な農業や産地の維持、農業収入の増大をめざします。
2030めざす姿
「持続可能な木曽農業の実現」
2022-2024 3ヵ年 基本目標
「農業所得増大への挑戦」
趣旨
10年後も木曽の農業・産地を持続するために、大規模から小規模のあらゆる農家層へそれぞれのニーズに合った支援を実施し、経営向上や生きがいづくりで持続可能な農業や産地の維持、農業収入の増大をめざします。
第1テーマ 販売力強化とコスト削減
重点施策 ①販売チャネルの拡大
企業等との契約等地域内での販路、ネット販売等による地区外の販路を開拓していきます。また、加工事業の強化により販売力を強化します。
主要施策 | 実施具体策 |
企業等との契約販売 | ふるさと納税の活用 |
地元飲食店・宿泊施設との契約 | |
加工事業の拡大 | かぶの販路拡大 |
新たな加工品開発 | |
木曽牛の加工品開発 | |
公式LINE登録者拡大 | |
農業の魅力商品発信 | |
生産者の紹介をシリーズ化 | |
ネット販売の推進 | 受注サイトの確立 |
セット商品販売 | |
契約農家確保 | |
直売の充実 | Aコープ直売担当の派遣 |
売場の増加 | |
契約農家確保 |
重点施策 ②生産コストの低減
省力化資材や肥料農薬の共同購入、機械化の導入提案等、生産コストの低減につながる施策を実施します。
主要施策 | 実施具体策 |
省力資材の活用による資材量の削減 | 省力化肥料の推進 |
省力化肥料の開発 | |
商品説明会 | |
JAでんきの普及 | |
天然由来素材や省力技術等の活用による労力の削減 | 防除回数削減に向けた天敵等利用技術の推進 |
成分分解マルチの普及 | |
牧場の活用推進 | |
労力削減に資するスマート農業機器の推進 | |
共同購入等による資材価格の低減 | 肥料・農薬早期予約共同購入の推進 |
予約率向上とスケールメリットを活かした資材仕入 | |
営農施設等への電力診断・供給 | |
粗飼料確保の推進 |
第2テーマ 農業生産基盤の維持強化
重点施策 ①安心して営農継続できる経営支援
個別訪問により、農業経営分析アドバイス、スムーズな経営継承の支援、ニーズに応じた農業労働力の支援等農業者の営農を支援します。
主要施策 | 実施具体策 |
農業経営分析による経営支援 | 個別訪問によるニーズの把握 |
農業経営分析に関するアドバイス | |
スマート農業等の技術指導提案 | |
スムーズな経営継承の支援 | 経営継承の意向確認 |
第三者継承に対するアドバイス | |
農地施設利用の情報提供 | |
ニーズに応じた農業労働力支援 | 個別訪問による意向調査 |
一日農業バイト導入 | |
農業ボランティア募集 |
重点施策 ②農業の担い手確保と育成
担い手の高齢化と減少の歯止めをかけるための施策として新規専業就農者の確保支援と多様な担い手の増加をめざします。
主要施策 | 実施具体策 |
行政と連携した新規専業就農者の確保支援 | 農業系学校学生への説明会 |
インターンシップ環境のPR | |
農地の紹介 | |
和牛肥育農家の増加 | |
若手後継者候補との交流会実施 | |
新品目による多様な担い手の増加推進 | 定年退職者への募集 |
定年退職者への研修会 | |
継続的なPR | |
小規模農地の紹介 | |
営農資材センター職員の営農相談資格取得 |
重点施策 ③生産量の維持拡大
営農技術員の出向く体制により重点品目の生産量、産地の維持に取り組みます。また、行政とJAの補助事業を活用した振興品目の生産拡大をめざします。
主要施策 | 実施具体策 |
営農技術員の出向く体制による重点品目の推進 | 農地巡回による病害対策指導 |
個別訪問による面積拡大推進 | |
新品目普及による販売高増加 | |
品質向上につながる優良資材飼料の提案 | |
優良雌牛導入推進 | |
行政とJAの補助事業を活用した振興品目の生産拡大 | 候補者のリストアップ推進 |
パワーアップ事業による設備導入支援 | |
行政の補助事業紹介と申請支援 | |
講習会開催 | |
ET産子導入販売 |
▼くらしの分野 木曽地域における組合員とJAの役割発揮
総合事業を通じて組合員や多様な関係者とともに協同の力でくらしやすい地域社会の実現をめざします。
2030めざす姿
「木曽地域における組合員とJAの役割発揮」
2022-2024 3ヵ年 基本目標
「総合事業と協同の力でくらしやすい地域社会の実現」
趣旨
人口減少・過疎化により地域社会の存続は危機的な見通しにあるとともに、正組合員減少に歯止めがかからない状況から、JA組織弱体化が懸念されます。総合事業を通じて組合員や新たな活動参加者や農業応援団とともに協同の力でくらしやすい地域社会の実現をめざします。
第3テーマ 組合員のメンバーシップ強化
重点施策 ①組合員の意思反映の取り組み強化
職員訪問や懇談会による組合員との対話を強化するとともに、准組合員の意思も事業運営に反映していきます。また、組合員の運営参画促進に向けた環境を整備しメンバーシップを強化します
主要施策 | 実施具体策 |
職員訪問や懇談会による組合員との対話強化 | 全職員個別訪問による対面活動 |
地区組織別懇談会 | |
組合員アンケートによる自己点検 | |
組合員の意見を聴くはがき | |
准組合員の意思反映方法の明確化 | 運営委員や女性部員による利用者モニター制度 |
事業利用度の高い准組合員への訪問活動 | |
准組合員アンケート | |
准組合員の意見を聴くはがき | |
組合員の運営参画促進に向けた環境整備 | 正組合員台帳の整備 |
テーマを設けた運営委員会での検討会実施 | |
組合員とJAの距離が近づく交流活動実施 |
重点施策 ②JA活動への理解促進と共感づくり
組合員メリットを実感できる施策を構築しJA活動への理解と事業利用を促進します。また「食」と「農」の情報発信と体験の機会を提供することによりJA活動の共感者を増やします。
主要施策 | 実施具体策 |
組合員がメリットを実感できる施策の構築 | 各事業の組合員特典創出 |
正・准組合員限定イベントの開催 | |
営農講習を特典とした加入者募集 | |
食と農の情報発信と体験機会の提供 | 食と農の体験プランをパッケージ化し提案と活動 |
SNS・HPによる情報発信 | |
地区だよりの定期発行 |
第4テーマ 事業成長と事業運営の効率化による組合員メリットの向上
重点施策 ①信用事業の取り組み
農業融資体制と相談機能を強化し農業規模拡大を支援します。また、ライフイベントに応じた利用者接点を強化し、農業・くらし・地域の金融仲介機能を発揮します。
主要施策 | 実施具体策 |
農業融資体制強化によるニーズに応じた資金供給 | 農業融資に精通した担当者育成 |
アクションプラン策定と実践 | |
利子補給活用による円滑な資金供給 | |
農業所得向上に向けた後継者や地域の担い手への相談機能の強化 | 後継者や担い手農業者等へのアプローチ |
担い手対応力強化に向けた人材育成 | |
生活資金ニーズへの対応 | ローン利用者メイン化と深耕 |
ライフイベントに応じた利用者接点の強化 | ライフプランサポートの実施 |
窓口・渉外によるライフイベントセールスの実践 | |
事業間連携による利用者の勧誘 | |
キャッシュレス決済の提案・ | |
資産形成・運用、相続対策ニーズへの対応 | 相談体制の構築・定着 |
商品・サービスの整備 | |
ステークホルダー目線の提案活動 | |
農業振興への関心・参画を促すサービスの提供 | 農業を基盤とした金融商品サービスの展開 |
農業体験等の機会提供 | |
JAカードを活用した農畜産物の販売促進 |
重点施策 ②共済事業の取り組み
農業リスクを相談できる体制を整備します。また、組合員・利用者サービスの向上と事業運営の効率化を両立できる体制を構築します。
主要施策 | 実施具体策 |
公的保障を含めた農業リスクを相談できる体制整備 | 営農指導員との連携訪問 |
農家向け3Q活動 | |
農業リスク診断システム活用 | |
全契約者・組合員に寄り添ったフォロー活動の実践 | 全契約者への3Q活動の実施 |
未加入者へのはじまる活動の実施 | |
事務負荷軽減・IT化への対応 | ペーパーレス・キャッシュレス契約 |
Webマイページ登録促進 | |
支払い査定業務契約者サービスの強化 |
重点施策 ③生活購買事業の取り組み
魅力ある商品、地産地消の取り組み強化と安定したライフライン機能を提供していきます。
主要施策 | 実施具体策 |
グリーンファーム、王滝生活店の魅力ある店舗づくり | 店舗展開、陳列商材の見直し |
定期イベントの開催 | |
販売チャネルの拡大 | ネット注文、ECサイトの構築 |
定期購入商品の開発 | |
宅配会員増加 | |
ホームエネルギー事業の充実 | LPガスの安定供給 |
ガソリンスタンドの灯油配送強化 | |
JAでんきの普及 |
重点施策 ④福祉事業の取り組み
福祉用具貸与、歯科診療を通じて、安心して暮らせる地域社会の一助を担います。
主要施策 | 実施具体策 |
介護・歯科事業の地域住民へのPR | 広報誌や訪問による事業広報 |
介護センターだよりの発行 | |
支所での介護相談会開催 | |
在宅介護を支える介護用品の提案 | 介護消耗品の定期販売 |
▼JAの分野 持続可能な経営基盤の確立
地域において農業協同組合として総合サービスを提供できる経営の健全性を確保し事業発展の投資と組合員還元が果たせる姿をめざします。
2030めざす姿
「持続可能なJA経営基盤の確立」
2022-2024 3ヵ年 基本目標
「経営基盤の強化」
趣旨
経営の持続性、健全性を確立するための経営基盤強化計画の策定・実行・実践に取り組みます。
第5テーマ 不断の自己改革の実践による経営基盤の強化
重点施策 ①総合リスクマネジメントによる収益性・健全性の向上
持続可能な収益性・将来にわたる健全性の確保に向けた経営管理・経営改善を実践できる態勢を確立し、経営資源の最適化による健全な事業運営をめざします。
主要施策 | 実施具体策 |
目標管理手法の高度化による収支改善 | 月次レビューの実施による新対応施策の実践 |
KPI(重要業績評価指標)による事業の進捗管理計画達成率向上 | |
ALM(資産・負債の総合管理)の高度化 | |
費用対効果に裏付けされた投資の検証 | 施設総合経営管理の導入 |
農業関連施設の管理 | |
固定資産関連の会計・税務の対応 | |
不稼働資産の有効活用による収益確保 | |
管理部門最適化による業務の効率化 | ペーパーレス会議導入による労力削減 |
ワークフローシステム対応 | |
業務の外部委託 |
重点施策 ②自ら考え行動する職員の育成
協同組合運営を実践できる職員教育、総合事業に対応できる人材育成に取り組みます。また、専門的知識を有する人材を採用していきます。
主要施策 | 実施具体策 |
総合事業に対応できる職員養成 | ジョブローテーションの導入 |
新規資格取得の推奨 | |
総合事業提案型研修の実施 | |
人事制度給与体系の見直し | |
協同活動を実践できる職員教育 | 協同活動への参加による体験教育 |
ファシリティ研修による実践 | |
専門的知識を有する人材採用 | 中央会と連携した採用活動 |
農業学校等への採用活動 |
重点施策 ③JAを支える組織基盤の強化
人口減少等地域の実態を考慮した組合員構成の見直しに着手します。また、組織規模に沿った業務執行体制の変更や経営資源の最適化による組織形態変更を継続的に検討していきます。
主要施策 | 実施具体策 |
地域の実態を考慮した組合員構成の見直し | 正組合員要件の検討 |
総代数の地区割合見直し | |
組織規模に沿った業務執行体制の変更 | 役員定数の検討 |
役員数の地区割合見直し | |
女性役員割合の向上 | |
経営資源の最適化による組織形態の見直し検討 | 継続的な支所機能の見直し |
SS事業の営業形態の変更 | |
事業別存続の要否を含む経営改善 |
▼自己改革工程表
JA木曽 自己改革工程表
JA木曽は、平成 28 年より、「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」「地域の活性化」を基本目標とする創造的自己改革の実践に取り組んできました。
これまでに自己改革として、農業開発基金等活用による地域農業振興支援、農業施設整備等の投資に取り組んだほか、「食」と「農」の理解を深め地域農業の応援団を拡大する「地産地消」の取り組みをすすめてきました。
この結果、平成 30 年に実施した「JAの自己改革に関する組合員調査」等において、多くの正組合員から、一定の評価と自己改革への一層の期待、多くの准組合員から、総合事業の必要性や地域農業を応援したいとの声をいただくことができました。
今後とも、JA木曽は、地域になくてはならないJAであり続けるため、自己改革の実践を支える持続可能な経営基盤の確立・強化とともに、組合員との徹底した対話を通じ、総合事業を基本として「不断の自己改革」に取り組んでまいります。
自己改革を実践するための具体的な方針
【下線項目はKPI(重要業績評価指標、Key Performance Indicator)設定】
1.訪問活動や農事懇談会を通じた「組合員との対話」を原点としてニーズを的確に把握します。
2.「農業者の売上増加・コスト低減」につながる取り組みについて、目標及び実践具体策の策定等と実践によって改革の目的である「所得増大」を実現するほか「地域の活性化」にも取り組みます。
・中核的担い手などを対象として、次のことに取り組みます。
ア.病害対策強化による販売拡大、イ.和牛子牛分娩事故減少策による出荷頭数向上
・中核的担い手や多様な担い手などを対象として、次のことに取り組みます。
ア.新品目野菜の取引の拡大
・必要とする全ての方を対象として、次のことに取り組みます。
ア.予約率向上によるコスト低減、イ. 銘柄集約肥料の取扱拡大
・「地域の活性化」に向けては、次のことに取り組みます。
ア.食と農の体験プランの提案と活動、イ.組合員や地域との交流やイベント活動
3.改革の取り組みと成果について対話等を通じて評価を把握し、次の改革につなげることで、PDCAサイクル《Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)》を回し、不断の自己改革を着実に実践します。
自己改革の実践に向けた組合員の意思反映
自己改革の実践にあたっては、改革の評価の把握に向けた正組合員との対話や地区別組織別懇談会のみならず、地域に根ざしたJAを目指して運営委員や女性部員による利用者モニターの仕組みを通じて「正組合員とともに、地域農業や地域経済の発展を支える組合員」である准組合員の声も聴くことで、正組合員と准組合員が一体となったJA運営を実現します。併せて組合員の評価を踏まえながら必要な見直しを行います。
また、農業振興の応援団でもある准組合員の事業利用にあたっては、正・准組合員の利用状況を把握したうえで、改革の目的である「農業者の所得増大」につながるよう取り組みます。
自己改革を支える経営基盤の確立・強化の取り組みについて
管内の人口動向は減少が続き、少子高齢化が進展しております。販売農家数は 2015 年と比較すると全体として約2割減少しています。また、JA木曽の販売品販売高は平成 30 年度 13 億円に対し令和に入ってからは 11 億円前後で推移している状況です。
こうした情勢のなか、JA木曽として現状のまま事業改革を進めなかった場合の5年後の成行きについてシミュレーションを行ったところ、5年後には現状と比べて事業利益が大幅に減少する見通しとなりました。事業利益減少の要因はJA全体の収支構造にあり、事業総利益の減少ペースが事業管理費の減少ペースを上回る見通しとなっております。事業管理費の削減が限界を迎える中、もう一段の費用削減に向けた検討が求められるとともに全ての事業において事業総利益の維持・拡大に向けた
取り組みをすすめる必要があります。
販売力の強化を通じた事業伸長や効率的な施設運営を通じた費用削減により、健全で持続性のある
経営を確保することが緊急の課題となっています。